昨年末~8月の急激な価格乱高下を振り返る

―鉄スクラップ価格は08年9月第2週(9/8)を底に反転―

 昨年末から6ヶ月で3万円上昇し、7月第2週に7万円台を記録した鉄スクラップ価格は、その後下降をたどり、わずか1.5ヶ月で6ヶ月前に戻った。9月に入り電炉の生産が再開されるとともに、韓国からの引き合いも再開し、第2週(9/8)を底に反転。第3週(9/16)は4万1,275円/tどころとなっている。
 反転は想定どおりだが、6ヶ月で3万円上昇し、1.5ヶ月で上昇分を戻すという急激な乱高下は、前年が年間を通して6,800円/tの上げ幅であることを見ても、有史以来の出来事である。その背景については本トピックス「最近の鉄スクラップ価格高騰を分析する」で述べたが、短期間の極端な乱高下は、需給双方の企業経営にとって決して望ましいことではない。もう一度経緯を振り返り二度と起こらないためにはどうしたらよいのか、英知を絞った工夫が必要である。

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1.急激な乱高下の経緯

①国内要因;まず高炉メーカーの鉄スクラップ使用継続増加がある。08年1~7月は推定290万tに達した。前年同期に比べ92万t増であり月間13万t増え続けた。これは大手電炉1社が増えた状態に匹敵する。背景に転炉鋼の増産基調がある。08年7月時点で転炉粗鋼生産は連続26ヶ月前年を上回る水準を続けている。また、電炉生産はわずかだが1-7月の前年同期比は22万t増であり、鉄スクラップの主要ユーザーとしての立場は変わっていない。

②海外要因;このような国内需要増加に加え、韓国メーカーの引き合いが07年から08年に顕在化した。韓国メーカーは中近東むけ輸出需要好調を背景としていると聞く。

③一方、国内供給は、改正建築基準法により新築住宅着工が停滞して建築解体物件が減少、工場発生屑箇所では価格好転をにらんで出荷をセーブするなどの動きが起きた。

④需要増加に供給が追いつかずギャップが拡大して価格高騰をたどったと推察する。

⑤しかし08年6月、6万円台となった時、高価格を嫌った韓国メーカーは日本くず購入から撤退する。当時韓国では貨物連帯ストが約1週間続き、大量に岸壁在庫が滞留したこともある。

⑥高炉の使用増はその後も継続し、価格は電炉と2者で引き合い続け、その結果、7月初め7万円台に達する。

⑦急落は韓国が荷受止めをしたことにより、湾岸の輸出向け在庫が滞留したことを発端とする。滞留在庫を国内電炉へ振り分けたが、折りしも夏季休暇と炉休がかさなりやがて行き場を失う。需給緩和状態が具現。7月26日大手電炉1000円/t下げ開始。8月は一気に下落をたどった。背景に原油価格急落で、世界的に商品市況が調整局面を迎えたことも挙げられる。

2.今回乱高下の特徴

 今回の短期間内乱高下は関東発であり、関東が日本の鉄スクラップ供給基地であることから、すぐ全国につながり、さらに韓国を介して全世界に広がった点に特徴がある。

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 米国コンポジット価格は7月第3週から第5週まで513ドルをつけるピークとなったあと下降に向かい、9月第2週は297.5ドル、3週は横ばいとなっている。

3.鉄スクラップ価格の特徴

 他の商品と異なる特徴がいくつかある。

①発生品であるため、計画的な供給が困難。

②回収~鉄鋼メーカーまでの流通が複雑で規模が小さい⇒供給側に価格をコントロールするほどの力がない。

③購入側の在庫置き場が小さい。

 以上から鉄スクラップは現物取引であり、価格は買手で決まっている。

4.今回急激高騰による需給双方の弊害

 需要側;昨年末からはじまった鉄スクラップ価格高騰に対応して、年初より製品価格改定を開始。しかし鉄スクラップは現金払いに対して、製品価格の多くは契約後3~4ヶ月先に出荷が条件である。このタイムラグに追いつかない状況が7月まで展開され、電炉収益を圧迫し続けた。
 供給側;多くは仕入れ価格は販売価格(=電炉購入価格)にスライドさせている。従って価格が上がっても利益は増えず、逆に利益率は低下。加えて仕入れは現金のため運転資金難を誘発した。

5.価格安定化への意見

 中長期的な視点に立つと国内外とも需要が強い状況が続くことが予想され、価格は今後も高水準で推移すると考えられる。しかし、小幅な乱高下は免れないとしても、今回のような短期間の急激な乱高下は避けねばならない。価格の安定化は需給双方の経営を安定化させる基本でもある。いかに製鋼原料として位置づけられ、グローバル化が進展して鉄スクラップが日の目を見る商品となっても、価格が不安定では使いにくい原料と変わらない。今回の出来事を契機に議論を進め、安定化努力をめざすべきである。

①価格を先導する大手電炉の存在感を改めて思い知った。これが日本の「現実」なのだ。そしてその結果が、もはや日本だけでなく世界に広がる状況にあることも確認された。「買い手」である鉄鋼メーカーが、直接市場介入しない方法はないものだろうか。

②購入側に在庫置き場がないため、直に市場の影響を受ける構造にある。「メタルストック」は今回のような乱高下に対して機能を果たすべくしてできた会社ではなかったか。

③鉄スクラップ価格サーチャージ制につき検討を進める。すでに欧米では実施されている原料サーチャージ制について、取り組みを開始すべきである。

2008.9.20

株式会社鉄リサイクリング・リサーチ

代表取締役 林 誠一