最近の鉄スクラップ価格高騰を分析する

―価格高騰は、製鋼原料・グローバル商品として市民権を得た証―

 最近の鉄スクラップ価格高騰には目を見張るものがある。小康状態だった昨年11月の3万5,000円と比較すると、本年7月第2週は6万8,110円と、わずか6ヶ月で3万円以上も急騰した。短期間でのこのような価格上昇は戦後60年の歴史をみても見あたらない。日本に限らず、世界最大の鉄スクラップ供給国アメリカにおいても昨年11月の250ドルから本年7月第2週は523ドルに2.1倍増加している。
 高騰の背景に、需要の国内外を問わない強さと地産地消商品からグローバルな商品となつた鉄スクラップを取り巻く環境変化があると考える。
 国内では高炉メーカーが好調な鉄鋼需要に対応するため高炉を目一杯稼動させ、不足分は鉄スクラップを投入させて鉄源を補っている。京都議定書に基づくCO2削減に寄与することも追い風となっている。
 国外では鉄鋼生産の拡大が止まない。世界の鉄鋼生産は70年代後半に7億トン台に乗った後、8億トン台となる2000年まで12年間を要したが、05年以降は毎年1億トン増加している。しかもこれを製鋼法別にみると鉄スクラップを主原料とする電炉法が拡大中である。その結果、07年の世界の鉄スクラップ消費量は5億1,000万tとなり、粗鋼生産13億4,000万トンのうち38%がリサイクル鉄で生産されたことになる。
 もはや鉄スクラップは発生品ではなく製鋼原料として使用されているのである。その結果、鉄鉱石や原料炭などの鉄鋼原料価格の上昇と無縁でなくなった。すなわち08年の鉄鉱石価格はブラジル産粉鉱が前年比65%up、オーストラリア産粉鉱は80%弱、塊鉱は96.5%up、原料炭は3倍となったが、同じ製鋼原料として鉄スクラップ価格も連動する関係にある。
 一方、世界最大の鉄スクラップ供給国アメリカは、07年後半からサブプライム問題の影響を受け経済不振が続いている。2番目のロシアは国内優先策が進展中であり、東アジア最大の供給国日本では、建築基準法改定により住宅着工が低迷し、従って解体物件が減少し発生が細っている。つまり世界的な需要の増大に対して、供給が追いつかない状態である。このような需給差の拡大が急騰を招いたと分析する。こうなると当分、価格は強基調で推移すると考えざるを得ない。
 急騰は鉄鋼メーカーにとって死活問題となっている。
鉄筋棒鋼を例にとると原料のスクラップは現金払いであり、足元の価格そのものに対して、製品は3~4ヶ月の手形であり、せっかく10万円台で価格交渉が成立しても、その効力は秋以降になる。
 また供給側の多くは、仕入れ価格は売値にスライドさせているので、利益率は逆に低下している。価格急騰は供給側にとって決して良い状況を生んでいないのである。
 しかし7万円台はさすがに買う方も限界を超えたとみられ、価格は7月第2週をピークにして調整局面となり、8月第1週は6万4,000円に低下した。折りしも旧盆休暇で電炉各社が休暇に入ることからさらに下落は続くと予想される。だがこれは季節的な要因であって基本的な需給タイト状態は変わっていない。6ヶ月前の3万円台に落ちることはもはや考え難く、反転は時間の問題であろう。
 何故なら鉄スクラップが発生品から製鋼原料に、地産地消商品から世界をめぐるグローバル商品となっているからである。高騰をきらって買い控えた韓国は、適正価格になれば日本くずの購入を再開するだろう。需給双方は、よくこの現実を認識して中長期的な視点で価格問題を考えるべきである。

2008.08.12

株式会社鉄リサイクリング・リサーチ 代表取締役 林 誠一